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第十三回 木と紙の仕切り役

  • 最終更新日:2015-04-24

第十三回 木と紙の仕切り役

和風住宅にあって、空間をやわらかく仕切る障子、襖、戸。今回は和風住宅のインテリアの大きなポイントにもなっている「仕切り」について考えてみました。

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いよいよ、わが家のリフォームも完成間近!今日は建具を入れる作業です。「これなら私もできる!」と、せっせと手伝うことにしました。そんな作業のなか、建具を間近で見ていると、改めて「日本の住まいは木と紙でできている」ことを実感しました。障子や襖、戸は、和風住宅の中で部屋と部屋、室内と室外を仕切るだけでなく、和風住宅全体の雰囲気をつくる重要なポイントになっています。障子や襖については、これまでに紹介したことがあるので、今回は「戸」を中心に、和空間に欠かせない「仕切り役」について考えてみたいと思います。

源氏物語に登場する仕切り

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蔀戸(しとみど)が開いている状態

源氏物語の絵巻には平安時代の貴族の生活が描かれています。絵巻を見ると、まず十二単などの着物の美しさに目を奪われがちですが、よくよく観察すると部屋の中に彩り豊かな「仕切り」として、「屏風」や「几帳」「衝立(ついたて)」などがインテリアの一部になっていることが分かります。この時代には障子や襖は、まだ登場しておらず、屏風などが広い空間のなかにあって仕切り役として活躍していたようです。

また、室外と室内を仕切る役割として、家の端=妻側にある開き戸の「妻戸」や、引き戸の原形ともいわれる「遣戸(やりど)」、雨戸の原形といわれる「蔀戸(しとみど)」も描かれています。「蔀戸」とは、細かい格子を組み板に貼った戸のことで、建物の外側の柱と柱の間に取り付けられ、跳ね上げ式に開き、外光や風雨を遮る目的で使われていました。引き戸や開き戸は一般に普及していきましたが、この蔀戸は一般にはあまり用いられず、今では古い寺院などでしか見られない珍しい戸のひとつです。

妻戸や遣戸が発展して、今の「戸」として使われていますが、「戸」にはさまざまなタイプがあります。まず、玄関や入口に用いられる格子戸は、縦に細い角材や竹を使い、横に貫く貫組子によって構成されています。本来は板や紙を張らず、格子ごしに向こうの様子が見えるようになっています。その他、簾を張った「簾戸」や、風雨から建物を守る「雨戸」、もともとは明かり障子を保護するために作られた「舞良戸(まいらど)」などなど、目的や場所によって使い分けできます。

引き戸の良さを生かす

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和風住宅には引き戸が多用されています。その種類は、引き違い、片引き、引き分け、引きこみなど、さまざまなものがあります。引き戸はドアのような開き戸に比べ、柱と柱の間、柱と壁の間に常に納まっておりスペースのジャマになりません。しかも軽く、簡単に取り外すことができます。部屋の仕切りになっている襖や障子を取り外せば、広い空間に早変わり。また、引き戸は狭い場所でも活躍します。朝の忙しい時間帯に親子がひしめきあう洗面所では、内側に開く開き戸では人にぶつかりそうですが、引き戸なら安心です。また、トイレはお年寄りが中で倒れたときに開けない危険もあるので、開き戸より引き戸にしたいところです。バリアフリーの住まいには、引き戸が適していますね。

現代風の引き戸といえば、開閉式の間仕切り戸ではないでしょうか。わが家のリビングの畳コーナーは、開閉式の仕切り戸で仕切れるようになっています。引き込み式なので家族みんなでくつろぎたい時は、間仕切りをすべて開け放つと開放的なワンルームに。1枚か2枚を閉めると、広さを感じながらも、独立感が得られます。一人で何かに集中したいときは戸をすべて閉じて落ち着いた時間を楽しむ・・・そんなメリハリのある暮らしが演出できますね。また、間仕切り戸といえば、子ども部屋に、もってこいです。子どもが小さい頃は広いワンルームで兄弟仲良く、成長したころに間仕切り戸で仕切って独立空間にするという方法もありますね。

和のインテリアアクセント

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「仕切り」の代表格といえば障子です。現代の障子は、さまざまなデザインがあり、個性ある和風空間を楽しむことができます。和紙も模様入りや色付きの他、耐久性がある障子ガラスも普及しています。お部屋のインテリアや用途に合わせて選ぶといいですね。わが家の障子はオーソドックスなデザインですが、私は手漉き和紙にこだわりました。張っているうちに、みるみるうちに白くなっていく「美濃紙」という最高級紙を使いました。最高級といっても障子1枚分で数百円からあるので、手軽に本物の和紙の風合いを楽しむことができます。

和の情緒ある雰囲気をもっと楽しむために、軒先に立て掛ける葦簾(よしず)や、軒先にぶら下げた簾(すだれ)を飾るなんて、いかがでしょう。日差しの強い夏や西日が強い時にも便利ですね。また、暖簾(のれん)も静かなブームのようです。暖簾は几帳がルーツという説もあるように、もともと色彩豊かなものですが、今は特にオシャレなものが揃っています。夏冬で色を変えて季節を演出してみるのもいいかもしれません。また、木製のブラインドや和紙を使ったロールカーテン、照明など、自然素材を使ったインテリアを使って、落ち着いた空間をつくってみましょう。(終)

【参考文献】

和風住宅の知識(小林盛太著、彰国社)

「和」の住まいづくり(経済調査会)

居心地のいい和風暮らしを楽しむ家(主婦と生活社)

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