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そろそろ我が家のリフォームも終盤戦。座敷などもおおむねできあがってきました。できたての新しい床の間を眺めていると、とても気持ちが落ち着きます。ふと見ると、床の間の書院の丸い窓はまるで、お月さまのよう…。1年中、名月観賞と洒落こめそうです。前回と前々回は、住まいのなかの動物や人の身体の名前を探しましたが、今回は天候や自然にまつわる名前を調べてみることにしました。
床の間の書院の窓には、いろんな形がありますが、我が家では円窓(まるまど)を採用しています。円窓は、月にたとえられ、まんまるの「満月棚」、雲がかかったような「おぼろ棚」、半月状の「新月窓」がよく使われます。円窓のほか、珍しいところでは富士山の形にも見える「富士火灯」などもあるんですって。
その昔、床の間の書院では、窓から入ってくるあかりで読書をしていたそうです。わたしも、それにならって読書をしようと思いましたが、今は装飾の一部になっており読書をできる機能はありません。月あかりで読書って、ちょっとオシャレと思いましたが、やはりムリですね(笑)。
月の形ではなく、「月の字」をモチーフにした仕上げが使われている箇所もあります。桂離宮新書院の一の間にある襖の引き手がそれです(図1)。この一の間と二の間を隔てる欄間には、月の字を抽象化した「月の字欄間」が施されています(図2)。この離宮には月波楼という茶室もあり、月見を楽しむために建てられたというわけです。
次は「雪」のついた部分です。以前にも紹介した「雪見障子」は有名ですね。障子の下の方にガラスが入っており、外の景色が見えるという障子です。ガラスを使うことから明治以降にできたといわれています。
月や雪の名前を使った箇所は、住まいの中で観賞用として使われていましたが、家の外回りで自然の名前がついた部分は、風雨から住まいを守るために作られているものが多いようです。
まずは「雨」から。屋根や壁の凹凸部分や開口部のまわりから、雨が入らないように上手に仕上げることを「雨仕舞」といいます。たとえば、一階の屋根と二階の壁が交差する部分の防水のために、「雨押さえ板」を釘打ちする場合があります。
なじみの深いものでは「雨戸」がありますね。「雨戸」には、こんな逸話が残っています。
戦国の武将、織田信長が京都に滞在中、ある館に泊まったときのこと。夕暮れになって館のどこかで「ガタガタ」という騒がしい物音が聞こえてきました。「何事か!」と家来を呼び、一時騒然となったそうです。よくよく調べてみると、館の主人が雨戸を閉める音だったとか。戦国の時代は「雨戸」が珍しかったので、みんな慌てたのでしょうね。
次は「霧」です。窓のすぐ上につける庇(ひさし)のことを「霧除け」といいます。「霧除け」というより、雨除けに有効ですね。
L型になった家の屋根で、棟が交差する部分を「谷」といいます。この部分から瓦の裏側に水がまわって雨漏りの原因になることがあります。普通は谷に金属板をつけて水がスムーズに流れるようにしますが、金属板の代わりに細工をした板を取り付ける場合もあります。水流が両側にあふれないように板の中間にN型の折り目(突起)をつけるのですが、その形が稲妻に似ていることから「稲妻折り」というそうです。
雷の次は「嵐」。壁の下地である木摺を斜めに打つことを「嵐打ち」といいます。斜めに木を打つので、壁の強度が上がって耐力壁として役割を果たし、強風や横揺れの地震に抵抗力を発揮します。
「水」は住まいの建築過程で重要な役割を果たします。家を建てる時、敷地の高低を測るために、瓶に水を満たし、これに長い管をつなげ、建物の布基礎上端のレベルを設定します(図3)。最近では測量機を使いますが、水瓶方式も非常に正確に測れるそうです。
「水」は厳格な水平を表し、「陸」はおおまかな平らの状態をいいます。和風住宅にはあまりありませんが平らな屋根の「陸屋根」は、厳密には水平ではなく、雨水が流れやすくするためか少し傾斜がついています。
このように繊細な匠の職人技により、わたしたちの住まいはつくられ、くらしが守られていることに改めて気がつきました。感謝です(終)
【参考文献】
建築語源考(飯塚五郎蔵著、鹿島出版会)
やさしい木構造のはなし(山田修著、学芸出版社)
和風住宅の知識(小林盛太著、彰国社)
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