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襖と聞いて思い出すのは、実家にまだそのままになっている私の部屋です。ふた間つづきの和室の四畳半を、弟の部屋とは襖で仕切って使っていたのですが、これがいやでいやで、ベッド以外の家具はすべて隣との境目の襖にそって置いていました。鍵のかわりに入口の襖につっかえ棒をしていた時期もあります。「襖越しの美学」なんていう言葉とはほど遠い思春期でした。
同時に思い出すのが、ドイツ人と旅館に泊まったという私の友人の話です。襖のせいで寝不足になった外国人のおかげで、さて、何がわかったのでしょうか。
つまりそのドイツ女性は、紙と木でできたドア(=襖)だけの部屋では不安でよく眠れなかったというのです。申し訳程度の鍵がついてはいましたが、その気になればたやすく蹴破ることのできる襖が、彼女の不安感をあおったというわけなのでした。
いわれてみれば、西欧では家は自然の厳しさや外敵から身を守る要塞だと考えられています。家のなかは分厚い壁で区切られ、堅牢なドアで閉ざされた個室が主流です。彼女が襖の部屋で安眠できないのも当然です。最近は日本も物騒になりましたが、このかよわい襖の向こうを神聖視し、むやみに開けない日本人共通の約束事は暮らしのなかに生きています。襖は音も筒抜けで、安全もプライバシーも守れる物理的保障は何もありません。が、この約束事ひとつに強力に支えられた「心理的仕切り」、それが襖なのではないでしょうか。
「襖」の語源のひとつに、平安時代の寝殿造の寝所(しんじょ)から発生したとする説があります。寝所は一段高い畳敷き、四隅に柱を立てとばりをめぐらせたもので、とばりは布を垂れ下げたものから、平安後期には襖に変化したといいます。フスマは「伏す」「臥す」に通じ、襖という字の「奥」は寝所を意味します。こうしてみると襖は単なる間仕切りではなく、空間の奥深くにあって体を柔らかく包んでくれるようなイメージがふくらみます。
空間を仕切るものとして、襖のほかに障子や屏風、衝立(ついたて)があります。これらは視線をさえぎりつつも、囲い込み据えることによって空間に何かしらの意味を与える働きがあります。神社の鳥居と同じですね。鳥居は一定の場所を神聖な場とみなして世俗から切り分ける魔力をもつけれど、物理的には何の力もない「象徴」だからです。
しかも襖の向こう側のプライバシーはあってないようなもので、これを尊重するには目に見えない人の動静を感じとり、思いやる「襖越しの美学」が必要です。襖を開ける前は声をかけますが、その直前にコホンと咳払いしてみたり。そしてその気配で、なかの人も身じまいを正す。こうした住まい方、作法が、日本人のあいまいな言葉や態度、以心伝心の「非言語コミュニケーション」を育ててきたのです。襖の開け閉て(あけたて)ひとつとっても、そっと閉めるかピシャッとやるかで、喜怒哀楽を伝えることだってできるのです。
ところで、志賀直哉の小説に『襖』というのがあります。かいつまんでいうと、十九歳の「私」は家族五人で旅館に滞在していた。客の立て込む時期で、ふた間つづきの十畳に五人で押し込められ、襖一重隣のもうひとつの十畳にも同じく五人家族がいた。遠慮し合ってはいるが音が筒抜けで、手にとるように互いの様子がわかる。隣の子守りの十六くらいの女の子「鈴」に好意をもったが、向こうも私を好いたらしい。どちらの家族も寝静まったある晩、すーっと襖が開き、しばらくしてすーっと閉まった。鈴のしわざだろう。翌朝、聞こえよがしに私を疑う隣の祖母の言葉に腹を立てた私は、とまあこんな話で、襖がかもし出す間と気配、田舎娘の素朴な愛らしさを描いた興味深い作品です。ぜひご一読を。
さて、いま思うに、いやでいやで仕方なかった襖の部屋で成長したのは、いいことだったのかもしれません。家族の気配を感じながらの生活に、ひどい孤独は無縁だったからです。
江戸の研究で知られる田中優子さんによると、日本人は大人になるために秘密をもつ必要はなかったのだそうです。つまり江戸時代の子供にとって、成長とは人にもまれながら自分を作っていくことであって、個室に閉じこもることではなかったのです。当時はどんなお金持ちでも個室をもつのは家長夫婦だけ。子供部屋はありませんでした。個人の利益を最優先する行動、秘密をもつことは家族の間では認められなかったのです。たとえ六畳ひと間に家族全員がいても、干渉も監視もされず、互いの存在を感じながら個々がしたいようにしている。たえず微妙な距離を保ち測りながら、人との関わりのなかで個人であり続ける。これが和風の人間関係であり、コミュニケーションだというのです。(終)
【参考文献】
『住まいと文化』(「住宅空間と人のかかわり--前近代の建築から」田中優子・住宅金融公庫刊)
『日本の家 空間・記憶・言葉』(中川武著・TOTO出版刊)
『清兵衛と瓢箪・網走まで』(志賀直哉著・新潮文庫)
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