定期借家権では、住居用の建物賃貸借については一定の事由に該当すれば賃借人に中途解約権が認められたと聞きました。賃貸人側からは認められないのに不公平だと思いますが、なぜでしょうか。
賃借人保護の考え方になっているからです。
従来、建物賃貸借の中途解約に関しては、民法で次のように規定されていました。「期間を定めて契約した場合には、原則として中途解約は賃貸人、賃借人双方に認められない。但し、当事者間で期間内に解約することができることを合意すれば、その合意に従って契約期間内に解約することができる」しかし実際には、中途契約条項を契約書に設けているのがほとんどです。住居用の賃貸借契約では、1~2カ月程度の予告期間を設けて賃借人に中途解約権を認めているのがほとんどで、賃借人は中途解約を実質的に自由にできるのが実状でした。もちろん、賃貸人側には正当事由が認められない限り、中途解約権はありませんでした。
定期借地権では、次の条件を満たした時には、賃借人側に中途解約権が認められてます。1.定期借家権契約であること2.住居用建物賃貸借であること3.建物の賃貸有効面積が200平方メートル未満であること4.建物賃借人が建物を自己の生活の本拠としていること5.転勤、療養、親族の介護、その他のやむを得ない事情により賃借人が自己の生活の本拠として使用することが困難になった時このような時には、建物の賃貸借は、解約申し入れの日から1カ月を経過することによって終了することになります。
居住用の定期借家権契約における中途解約権は、強制的に適用される規定ですから注意を要します。つまり、これに反する契約内容に合意したとしても、法律でその規定は無効となります。例えば、住居用的建物賃貸借契約で、「賃借人はいかなる事由があっても中途解約をすることができない」といった約定を契約に入れたとしても無効となるわけです。もっとも、従来からこのような取り扱いでしたから、実務上は大きな影響は受けないと考えられます。これは住居用のみに適用され、事業用については、当事者間での約定に従って中途解約できないとすることは可能です。定期借家権においても、賃貸人側に中途解約権がないことに変わりはありません。不公平に感じられるかもしれませんが、賃借人保護の考え方であると言えます。一戸建て住宅等で200平方メートル以上の広いものについては、この中途解約権がありません。60坪もの住居面積ともなれば相当な大きさですが、今後はこのような住宅の所有者が定期借家権で貸して、自らは都心や逆に地方都市で老後の生活を送るということが考えられ、賃貸住宅として市場に出ることが予想されます。その時には、安心して長期間貸すことが可能と言えます。
定期借家権の中途解約権